※この記事は外来の投与が終わった今、当時を思い出しながら書いています
前回記事では発覚から15日目で悪性リンパ腫と診断され、このタイプは完治の可能性がとても高い、と言うことでまずはひと安心
さて、敵の正体が判明し、次はどうやっつけていくか(抗がん剤か放射線治療かなど)、とその準備の期間に入っていきました
全体のスケジュールはこれ↓
どこで治療を受けるか問題
まだ生体検査による胸の痛みは残るものの、診断後は相変わらず家で過ごす日々
完治可能と言われ、早く治すぞーと前向きに考えていたが徐々に頭によぎるのは仕事と治療費こと。どうやって仕事(収入)を維持し治療をしていくのかを考えていました
実は検査入院の時に今後どうやって治療をしていくか(イギリスに残るか、日本に帰るか)を当時のドクターに聞かれ、その時はイギリスに残って治療を受けるって答えてたんだけどまだ自分の中では決めかねていた
確かに日本に帰り、親のところに住めば家賃はかからないけど、日本で保険に入ってないから恐らく治療費がとんでもないことになりそう。それをまかなえるだけの貯金もないのでこの手は却下
イギリスに残るとNHSという国の医療システムを使え、素晴らしいことに基本的に治療費は無料。生活の基盤もこちらにあり、小さい子どもいるのでこっちの方が現実的。ただ、問題になるのはロンドンの高額な家賃
家族3人で住む最低限の大きさのフラットの家賃はおよそ20万円/月。ロンドンのこの異常な家賃は大きな問題で、仕事でもらえる収入と家賃のバランスが完全に崩壊しています。奥さんが子どもの面倒を見ながらパートタイムで働いてもとても払える額ではないのです
結果的に僕は家賃を払える収入を維持しながら治療を受けられることにはなったんだけど、ほんと運がよかったと思う。日本の患者さんのいろんな話を見てるとやはり治療費は頭を悩ませる大きな問題
日本で働いててもまさか自分ががんになると思わないからがん保険に入ってなかったかもしれない
そして4年前に海外移住を決意した時に候補としてあげていた国の一つがアメリカだったんだけど、そこでアメリカに行かなくてよかったーとも思った。アメリカは風邪をひいて医者にかかるだけで数万円かかるほど医療費が高額で、確かにがん保険もあるんだけど月々の支払いも高いから多分入ってなかったと思う
アメリカにいてがんになったら多分仕事も維持できなくなり、日本に帰国、この歳で親の扶養に入り、お金を借りながらがん治療をすると言う過酷人生だったと思うと恐ろしくなる。イギリスを選んだ過去の自分、えらい
とまぁそんな感じでイギリスで治療を受けていくぞと心に決め、PET-scan までは治療に向けて仕事を整理する日々でした
人生初のPET-scan
いよいよ PET の日になり、これもまた人生初。PET-scan とは放射性物質を付加したブドウ糖を静脈経由で体に入れ、体の中のがんの広がりを可視化する検査のこと
がん細胞は活発が盛んで、空腹状態でブドウ糖を注入するとそこに集まるんだとのこと。そして付加された放射性物質をCT画像と合わせて腫瘍の位置とか大きさを捉えるんだとか
以前からこの検査方法は知っていたんだけど、実際受けるのは人生初。いやー面白かった
確かに放射性物質とか CT による被爆は気になるところだけど、放射性物質を保管してる箱とか注射器が確かに鉛製(鉛は放射能を良く遮断する)とか、検査後は数時間自分の体から放射能が出てるから小さい子どもから離れた方がいい、などなど今までただ知識として知っていただけのことが目の前に起こると面白いですね
検査自体はいつもの CT みたいに10分くらい横になって終了!簡単!
ちなみに検査結果はこちら
右に見える白いのが腫瘍です。大きいですねー
大きさは11cm。後々この大きさが問題になるんだけど、ここまでの大きさは珍しいケースみたい
ドクターと治療方針の面談
PET-scan から1週間後、いよいよ血液科の担当のドクターと面談。今までは検査が中心だったから臨時や腫瘍科のドクターなどコロコロ変わっていたが、今回でこれからずっと面倒を見てもらえるドクターに会えるということで面談は楽しみにしてました
今までの病棟とは変わり、血液科の病棟に向い、受付を済ませ1時間待てど2時間待てど…全く呼ばれないではないか!NHS(イギリスの医療システム)は常に人不足でスタッフはみんな忙しそうにしてて、あまりせかしたくないから大人しくしてたけどさすがにおかしいと思い2時間半たった時に受付に聞きに行ったら、自分のことが忘れられていた
どうやら受付内で情報伝達がうまく行ってなかったみたい
まぁ検査入院の時もそうだったけど数時間待たされるのはよくあることなので、特に何も言わずにやっとドクターと面談へ
このドクターがとても素晴らしい人で、先日撮った PET-scan の写真とともに丁寧に病状から治療方針まで説明してくれました
私が罹ったのは悪性リンパ腫でも古典的なホジキンリンパ腫で、根治が可能なこと。ただ気がかりなのが 11cm という大きさで、典型的な抗がん剤ABVDから治療を始めるが、経過がよくなければ放射線治療を取り入れる。でも放射線治療は体への負担が大きいうえに二次がんのリスクが大きいからできれば避けたいなどなど、丁寧にそして正直に説明してくれました
また、いずれの場合も生殖細胞への影響は避けられないので、もし将来子どもを望むのであれば精子凍結保存をすることができると勧めてくれた。幸い10ヶ月になる息子がいたが、できれば2人目も欲しかったので迷うことなくお願いした
この時で胸の痛みが出てからおよそ4週間目。先生との話の中で改めて自分の体にがんがあることを自覚しました。目の前に動かざる PET の写真があるし、先生と治療方針やそれに向けての準備まで話してるし
「あーこれはやっぱり自分の体に起こってることだし逃げられないことなんだなー」
となんだか妙に納得
そして早速精液採取の日程(合計で3回)と免疫システムが下がるのでインフルとコロナ(3回目)の予防接種の日取りを決めて、病院を後にしました
その後はちょくちょく、血液検査やら予防接種やらで病院に通い詰める日々で、次回はとうとう発覚から36日目で抗がん剤1回目の投与開始!
ちなみに抗がん剤の生殖細胞への影響はどうやら投与後2週間しないと出てこないらしく、1回目投与後に精液採取することになりました
次回はこちら↓
前回はこちら↓
Comments